山口市の山あいに居をかまえ、日々、描きつづける画家、吉村芳生(1950年、山口県防府市生まれ)。
1970年代半ばから一貫して、写真と見まがうほどに克明に描かれた鉛筆画を制作し、国内外で発表。地方から発信し続ける美術家として、独自のスタンスを築いてきました。
新聞の見開きを丸写しした《ドローイング 新聞》(1977)や、自分の顔を一年間毎日欠かさず写真に撮り続け、一枚ずつ丹念に、模写した《365日の自画像》(1981–90)。初期作品に特有の、克明に描き出されたモノクロームの世界は細部にいたるまで一分の隙もなく、その描写力は、私たちを驚嘆させずにはおきません。画面に積み重ねられた鉛筆の微細な一筆一筆。鈍く光る鉛色の気の遠くなるほどの集積が、画面に注ぎ込まれたであろう吉村の膨大な時間を語りかけてくるのです。
「鉛筆でうつしつくすことへの執着」は、近年の花を描いたシリーズでも衰えを見せません。色鉛筆による大作《コスモス 徳地に住んで見えてくるもの》(2007)を一見するならば、誰しも息をのんでしまうことでしょう。その「偏執狂」的とでもよびたくなるような細密描写が、光に満ちた色彩世界の奥底にひそむ妖気すら感じさせるのです。
今回の展覧会は、この30年にわたって「うつしつづけてきた」吉村芳生の軌跡を、 約60点におよぶ作品によって紹介するものです。厳格な黒で構成された初期作品、豊穣な色彩に満ちた花の作品、そして、ここ数年再び取り組み始めた〈新聞〉と〈自画像〉をモチーフとしたシリーズを通して、「執着」からこぼれでる美しさをご堪能ください。

展覧会

吉村芳生展 ─とがった鉛筆で日々をうつしつづける私

2010年10月27日(水)~12月12日(日)

[開館時間] 9:00〜17:00(入館は16:30まで)
[休館日] 月曜日
[観覧料] 一般900円(700円)/シニア700円(500円)/学生700円(500円)     
※シニアは70歳以上の方、( )内は前売りおよび20名以上の団体料金。
※18歳以下、および高等学校、中等教育学校、特別支援学校に在籍の方は無料。
前売り券は、ローソンチケット(Lコード61779)および県内各プレイガイドでお求めください。
プレイガイドの詳細はこちらのページにてご確認いただけます。