展示案内

神を宿す呪力

本格的な作例では現存最古となる、
平安時代の檜扇。
永く社殿の奥に秘められてきたがゆえに
美しい色彩が残り、紅葉や萩などの合間を
蝶が舞う様子が見える。
扇は神と人を結ぶ道具であり、
時に御神体そのものとなった。

画像:彩絵檜扇
《彩絵檜扇》
重要文化財 一握 平安時代 12世紀 島根・佐太神社
(島根県立古代出雲歴史博物館寄託)
[展示期間:3月20日(水)〜4月14日(日)]

はかなさの美

空中を舞い落ち、水流に漂う扇。
形を変え、やがては波間に失われてゆく。
「扇流し図」が描かれたこの襖絵は、
将軍が湯上りのひとときを過ごす空間を飾ったもの。
優雅な清涼感が、扇の儚さを引き立てている。

画像:扇面流図
《扇面流図(名古屋城御湯殿書院一之間西側襖絵)》
重要文化財 狩野杢之助 四面 江戸時代 寛永10年(1633)頃 名古屋城総合事務所 [全期間展示]

画像:舞踊図

華麗なる舞

鳳凰や、龍、孔雀など、おめでたいモチーフをあしらった衣装をまとい、
金色の空間で艶やかに舞うマドンナたち。
手先で軽やかにひるがえる扇が、
衣装の麗しさとポーズの華やかさをさらに際立たせている。

《舞踊図》
六面 江戸時代 17世紀
サントリー美術館[全期間展示、ただし場面替あり]

人と人をつなぐ

竹骨を削る男に、扇紙を貼る女。
中世に大量生産が可能となった扇は、
贈答品として、コレクション・アイテムとして、
人々の間を自在に行き来するコミュニケーション・ツールになった。

《扇屋軒先図》
二曲 一 隻 江戸時代 17世紀
大阪市立美術館(田万コレクション)
[全期間展示]

画像:扇屋軒先図

物語をのせて

繊細な物語絵を、手中でコンパクトに楽しめる扇。
屏風に貼り集めれば、ダイナミックな鑑賞も叶う。
優美な王朝物語から、迫力の合戦物、
由緒正しき寺社縁起まで、
物語は扇に描かれる人気テーマの筆頭だった。

画像:北野天神縁起絵扇面貼付屏風

《北野天神縁起絵扇面貼付屏風》
(右隻)部分

画像:北野天神縁起絵扇面貼付屏風

《北野天神縁起絵扇面貼付屏風》(右隻)
六曲一双 室町時代 16世紀 大阪・道明寺天満宮
[全期間展示、ただし左右隻を展示替]
画像:一の谷合戦図屏風
《一の谷合戦図屏風》(左隻)
海北友雪 六曲一双 江戸時代
17世紀 埼玉県立歴史と民俗の博物館[展示期間:3月20日(水)〜4月14日(日)]

巨大化した扇

扇を開閉する動きを、屏風のそれに見立てて描いた、
機知に富む約3メートルの巨大扇。
熊谷直実と平敦盛の一騎打ちを、鮮やかな色彩で魅せる。
変幻自在な扇の、究極の姿のひとつ。